マウスピース矯正で治せる症例と治せない症例

患者さんの負担を大きく減らすマウスピース矯正ですが、適応症例(治療可能な歯並び)の多さでは、ワイヤー矯正にかないませんでした。

ただし、近年は技術の進化と臨床経験の蓄積により、マウスピース矯正で治せない症例は減少してきています。

マウスピース矯正の苦手な症例と得意な症例、マウスピース矯正の種類の違いによる適応症例の違いや、医師の経験によっても適応症例が左右されることなどを解説します。

マウスピース矯正だけでは治療が難しい症例

マウスピース矯正は歯を平行に動かすこと(歯体移動)を苦手としているため、抜歯したことで生まれた大きな隙間を埋めるような、歯根の移動量が大きい症例は苦手としています。

また、上下の顎の位置が前後左右にズレている場合(上下顎前突)はマウスピース矯正では治療が難しくなります。

  • ・歯根の移動量が大きいケース
  • ・顎変形症など外科手術が必要なケース

非適応症の例

「重度の叢生」「左右に顎がずれている症例」「上下顎前突(骨格性)」のような症例ではマウスピース矯正単独ではなく、ワイヤー矯正の技術を併用するようになります。

マウスピース矯正で治療が難しい例
重度の叢生
(そうせい)
左右に顎がずれている症例 上下顎前突
(じょうげがくぜんとつ)
歯のデコボコや重なり度合いが重度の状態 左右のあごがずれていることで噛み合わせがずれている状態 上下のあごの骨の位置に前後、左右のずれがある状態
重度の叢生 交叉咬合 上下顎前突

ワイヤー矯正と併用することで適応症例は増える

マウスピース矯正だけでは適応できない症例でも、最後の仕上げや治療工程の一部をワイヤー矯正と併用して行うことで、難症例でも治療ができる可能性はあります。

難症例でなくても、もしもの場合に備えて、マウスピース矯正だけでなくワイヤー矯正の経験も豊富な矯正専門医を受診することをおすすめします。

歯科医の経験によっても治療可能な範囲が変わる

ひと口にマウスピース矯正といっても、取り扱っているアライナーの種類や担当医の経験・技術によっても適応症例はかなり異なります

矯正治療は、矯正を専門に学んだことがなくても歯科医師免許さえ持っていれば行えるため、医師ごとの経験の差が出やすい医療行為です。

マウスピース矯正はワイヤー矯正ほど職人的な技術は要求されませんが、逆に言うと、「正しい適応診断を行えるか」が治療の成果を左右してしまう面があります。

あるクリニックではマウスピース矯正では治療できないと診断されても、別のクリニックではマウスピース矯正で治療ができると言われる場合もあります。

それは過去に似た症例を治療した経験や、取り扱っているマウスピース矯正の種類、矯正治療を専門に行っているクリニックなのか、矯正治療も行っている一般歯科なのか、ということにも左右されます。

正しい診断には歯科矯正に関する深い専門知識と、豊富な症例経験が必要になりますので、経験豊富な矯正専門医にあたるのが無難です。

種類・メーカーによる適応症例の違い

アクアシステム

アクアシステムは、前歯のプチ矯正やワイヤー矯正治療後の最終仕上げ、後戻りの治療など、基本的に軽微な矯正にしか適していません。

歯根の移動を伴う矯正治療は、ワイヤー矯正と併用して行うことになります。

アソアライナー

アソアライナーは、奥歯の噛み合わせに問題がない場合の前歯の矯正や、歯の隙間の矯正に適しています。複雑な歯列のコントロールには不向きです。

インビザライン

インビザラインも歯根の移動量の大きな治療は苦手としていますが、臨床経験の蓄積により、従来では難しいとされてきた症例も治療可能になるケースが増えてきました。

マウスピース矯正は歯とのフィッティングがよいほど正確な動きをさせることができますので、治療の成功は歯型の精度に左右されます。

iTero(アイテロ)という歯型3Dスキャンシステムが登場したことにより、従来のインビザラインよりも格段に精度の高い歯型を採取することが可能になり、歯の後方移動や歯列の拡大もしやすくなりました。

iTeroの登場で、インビザラインでの矯正治療の可能性は拡がりを見せています。

iTero
iTero
種類・メーカーによる適応症例数の目安
アクアシステム アソアライナー インビザライン
(従来)
インビザライン
(iTero)
適応症例数
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